かつて自宅など新築するとき,「家を建てる」と表現するのが普通に使われてた.
最近よく耳にするのが,「家を買う」である.
「建てる」ことと「買う」ことでは,実質真逆の関係だ,家を買うという表現を
頻繁に見聞きし始めたのはいわゆるハウスメーカーの標準タイプ住宅を自宅用地
にどのタイプなら納まるか?ということを前提にその土地に入るプランを標準図
から選択したり,営業マンがこのタイプなら入りますね.と言った具合に商品と
しての住宅標準プランをすすめて,標準プランを「売る」と言う事からだ.

では,「建てる」という言葉を使う場合はどうなのか?,その場合,以前から住
んでいた場所に建てるのか,新規に用地を準備してその場所に建てるのかと言う
こと等の状況の違いがあるにせよ,「建てる」と言う事は,その関係性の整理か
ら始まる.それは,どの様な場所で,方位はどうか,道路との関係はどうか.周
りの環境とこの場所はどの様な関係性があるのか,といった周辺環境いわゆるコ
ンテクスト(場所の脈略)の読み取りから,建築主の要望とコンテクストとの関
係性を整理しながら,より快適な空間を追求し,建築主の想いを具体的に表現し
た結果として,場所と・建築と・そこに住まう家族・人がより快適な空間に住ま
うことを主目的に建築することで,これらの行為は前述の「買う」ということと
は全く前提としての次元が違うと言える.

建てると言う事は:コンセプトの整理と構築からはじまりそれを具体的に表現し
より豊かな空間を追求し住まうことをめざしている.

2021年5月21日 岩本秀三
広島の家